やる気を伸ばす

上司だったら部下、親だったら子供、教師だったら生徒にやる気を出させるときに、叱りつけたり、うまく行ったときに報酬を与えたりすることは多い。報酬はまだ良いとしても、叱りつけても何の解決にもならないと考える。

自分も会社にいたことがあるので、自分や部下・後輩のモチベーションをどう高めるか、を考えたことがある。

しかりつけてもやる気をなくすだけである。そして、出世や金を欲しているわけではない人間には、報酬というアメも効かないだろう。自分のやりたいことがまだ曖昧だったり、将来のヴィジョンを描けてない人間にはアメもムチも意味がない。そんなことしてもやる気をなくすだけである。第一、報酬だけを求めて上にのぼっている上司や親や教師に対して、今の人々がどれだけ尊敬を持つのだろうか?軽蔑の対象にしかならないのではないか。勝手にやってろという感じになる。

エドワード・デシの「人を伸ばす力」では、内発と自律を高めることに重きをおく。内発の反対は外発で、それは、外部的なアメとムチによる動機付けである。そうではなく、内側にある、「これをやりたい!」「これが面白い!」という内側から湧き出る力が内発である。そして、自律が大事という意味は、自分が取り組んでいる課題についてのコントロールをその人に任せて、「自分の裁量でこれをやっている!」「自分の力をこの仕事に発揮できている!」という感覚を与えることである。アメとムチは当然「内発」にも良くないだけでなく、「自律」にも良くない。「俺がやりたくてやっているのであって、君のコントロールや評価のためにやってるのではない!」という思いになるからである。

だから、教育するときは相手が日々どういう目的やモチベーションを持っているか、何を楽しいと思うのか、何が重要であるかをきちんとつかむことである。そしてそれに沿って、相手の取り組む課題や方法を考えるのである。

かなしいかな、実は「やりたいこと」がその会社でできないものだったりすることもある。その場合、そういう人に対して動機付けができないし、他の道を勧めることも職務上できないので、お茶を濁すしかなくなる。だから、会社においてはモチベーションを高めることにおいて、上司は限界がある。キャリアコンサルタントや友人などに相談するしかない。会社と比較すると、学校や親はそういう意味では、生徒・子供に柔軟な対応ができるはずである。

 

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

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