角田光代「対岸の彼女」を読んだ

うーん、これは名作…(歎息)。大昔、買って読んだ時は、夫に理解されない妻が女性社長の都合できつい掃除の仕事をする、というところだけを読んで、「なんか読むの辛いなぁ」と思って読むのをやめてしまっていたのだった。

今回、読み直せたのは年をとって、そういうことを社会に出た自分が大なり小なり経験したことがあるのかもしれない。

ところで、物語で「自分の殻を破る」というのは重要な場面の一つになると思うし、それが主人公の成長に繋がったりするのだと思う。この物語でも、家出するとか、人を襲うとか、悪い方向へ向けて登場人物が自分の殻を破いていってしまう。それは彼女たちにとっての成長でもあるのだが、同時に彼女たち自身の「心の穴」(二村ヒトシさん用語)をさらに広げていっているような気もした。今の殻を破るために行動したが、それが心の穴を広げてしまう、それがこの小説の切ないところなのかもしれない。

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)