コンビニ人間と百円の恋

コンビニ人間」を読んだ。

主人公はアスペルガーっぽい雰囲気の女性で、大学時代の18歳から36歳まで同じコンビニでアルバイトを続けていて、恋愛経験もない。周囲からは、ちゃんと就職しないの?とか、結婚しないの?とか聞かれ、いつも返答に困っている。

彼女はコンビニ店員としてはすごく優秀で、細かなことにすぐ気づき、常に創意工夫を欠かさない。彼女はコンビニで働くことで、自分を保つことができ、充実した毎日を送ることができるのだが、周囲のいわゆる「普通」の人々はそれがわからず、彼女に対して「普通」を押し付けてくる。彼女はそういった「普通」の生き方をしてみようと試みて、コンビニをやめてしまった途端、ちゃんと生きることができなくなってしまい、またコンビニへ戻っていく。

読んでいると、コンビニで働くことは彼女にとって最良の選択であることがわかる。また、周囲の「普通」の人々の押し付けが、暴力的であると気づく。

コンビニ人間

コンビニ人間

 

 

コンビニといえば、映画「百円の恋」も最近見た。これはいつまでも働かず、実家で食わせてもらってる自堕落な32歳の女性がある日、家を追い出され、100円ショップで働き始める物語である。ここでも主人公はコンビニで働くという単調な毎日の中で徐々に自分を取り戻していく。そして、ボクシングジムに憧れを抱いて通い始め、プロボクサーになっていく。 たるんでいた体は徐々に締まっていき、繰り出すパンチもどんどん俊敏に、そして強くなっていく。ひたむきに頑張る姿に思わず涙してしまう。

百円の恋

百円の恋

 

 

両方の物語で共通しているのは、コンビニの音が重要な意味を持っていることだ。私はコンビニで働いたことはないのだが、コンビニの音楽やレジの音は単調で、もし私が働いていたら気が狂うんじゃないかと思っていた。しかし、実はこの音が従業員のスイッチをオンにする効果を持っているようだ。「百円の恋」では試合の入場曲に、主人公が働いている100円ショップの曲を使っていて、思わず笑ってしまう。

 

彼らにとってコンビニは自分を律して、自分を世界に接続し、健康に生きるために不可欠のものだった。どんな職業や活動が自分にとってそのような意味を持つかは一概に言えない。それを探さずに、何も考えずに、「普通」の生き方をしていては、自分自身が苦しむことになる。他人からどう思われようと、自分が良いと思う生き方を認めていくことが大事だ。