学習性無力感

非常に良い本を買った。デイヴィッド・マクレイニー「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」。人間が自然とやってしまいやすい48の誤謬のパターンを説明するもの。頭から読まなくても、気になったところをつまみ食い形式で読める。

思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方

思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方

 

ここに書いてある「学習性無力感」が興味深かった。

学習性無力感 - Wikipedia

心理学者のマーティン・セリグマンがパブロフの実験と逆のことをしてみた。すなわち、ベルを鳴らした時に餌ではなく、逃げられない環境で電気ショックの痛みを犬に与えたのである。これを繰り返したのちに、痛みから逃げられる場所に置かれても、犬はベルを聞くと逃げることをせずに痛みを受け入れてしまう。なお、電気ショックを受けなかった犬はちゃんと逃げた。

人間も同じで、ストレスを受け続けると、自分ではどうしようもすることができないと考え、抵抗しなくなる。うつ病の多くの人がそのような状態であり、かつ、彼らは失敗が起こった時に自分以外のものに責任を求めず、自分がダメだと思いやすい。

日本だと、きつい仕事で、冷静な目で見れば会社を辞めた方がいいような環境にいる人が辞めれないのも学習性無力感であろう。

逆にストレスが少なく、簡単な成功でも多く経験すると、難しいこともできるように思えてくる。また、責任とコントロール感を人に与えるとやる気が増してくる。ホームレスのシェルターで、ベッドや食べ物を選べる場所であるか否かは、その後の職やアパート探しへの気力に大きく影響する。

この本では以下の点を強調している。人は強いストレスの中で、会社や政治や自分の経済状態など、どうにもならないという無気力感を抱く。携帯電話の壁紙や呼出音をカスタマイズすることで自分の無力感をはねかえそうとしている。しかし、そこで終わってはならず、自分の行動に反撃し、失敗してもくじけけないようにしなければならないと。

映画での物語における主人公の逆転劇もそのようなものなのだろうと思う。物語は、人間がやってしまいやすい誤謬に否を突き付けるものと思うので、本書はいろいろ参考になりそう。