「勤勉」ってなんだ?

よく「日本人は勤勉だ」と言われてきた。最近はそうではなく、「ゆとり世代はやる気がない」とか「いやいや、年長者もダラダラ仕事しているだけ」とか言われている。ただ、どうやら高度成長期のサラリーマンは勤勉だというふうにはよく言われてきたと思う。

ドイツ人も勤勉だと言われる。しかし、彼らの労働時間は日本人よりすごく少ないと言われている。その代わり密度が濃いとか。

イギリスに来て、あるアッパーミドルの階級の人が「うちの国の労働者階級は仕事にやる気がないね。特に都市部。彼らは生活保護に頼りやすい。で、働き者の移民がその穴を埋めている」なんて言ってるのも聞いた。なお、この人は50代前半でリタイアして、その後は適当にAirbnbのホストをしつつ、毎日近くのケンジントンパークの散歩と文学作品の読書とギターを弾くことを日課にしている(勤勉?)。

アメリカに行った時に、数十人だったか、数百人だったかの部隊のリーダーを若くしてやってる軍人と喋ったこともあるが、「うちの国のやつは日本人と比べて全然真面目に働かないよ」と言ってたのも聞いたことがある。彼は確かに真面目で勤勉を絵に描いたような人だった。

日本の「勤勉」観に辟易してる私は、何が「勤勉」なのかわからない。多くの日本人の勤勉さは、服従というか隷属というか、要は奴隷的な勤勉と思っているので。

「勤勉」というと、マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という本を思い浮かべる。プロテスタントの人々は、「働いて報酬を貯蓄したり、次の財の生成のために投資をして財を作ることが神に今後救われる人の証」と考えていたことから、資本主義は始まったとする議論である。

もしかすると、「勤勉=大きな貯蓄をして自分のために使わないこと」とイコールになってるのではないか?もしそうだとすると、高度成長期の日本人は確かに勤勉だ。70年代の貯蓄率は20%超えで、めちゃくちゃ高かった。現在の労働時間の短く生産性の高いドイツ人も高い貯蓄率を誇ってるから勤勉だ。多くのアッパーミドルのイギリス人もお金に困ってないから勤勉だ。そういえば、働かない貧乏ニートは批判されるが、働かない高額資産相続者は日本では批判されないなぁ。

でも、どうなんだろう。もしそうだとすると、経済が疲弊している社会ではすごく頑張ってても貧乏な人はいっぱい出てくるので(2014年、日本の貯蓄率はマイナスになった)、そういう人たちは勤勉じゃないってことになる。

この定義だと本来の「勤勉」って意味からかなり離れてしまってるような…。でも、きっと貯蓄傾向で勤勉かどうかを計っているのは事実な気がする。